ソクタ
トラバース計算、ひとつひとつの式は分かるのに「どの順でやるんだっけ?」で止まりませんか?手順が多いだけで、流れは1本道です。観測角から座標確定までを、1つの計算例で通して見ていきましょう。
この記事の要点
閉合トラバースの計算は、①観測角の点検 → ②方位角 → ③緯距・経距 → ④閉合差・閉合比 → ⑤誤差の配分 → ⑥座標確定の6ステップで進みます。各ステップの詳しい記事は別にあるので、本記事は「どの順で、何を使うか」という全体の流れを、1つの数値例(計算表つき)で通して整理します。
トラバース計算は、個別の式(方位角・緯距経距・閉合比など)はわかっても、つなげると迷子になりがちです。ここでは全体を1本の流れとして見えるようにします。
閉合トラバース(出発点に戻ってくる多角形)の計算は、次の順番で進みます。
① 観測角の点検(角閉合差):内角の和が理論値((n−2)×180°)と合うか確認し、ずれ(角閉合差)を各角に等分配分。
② 方位角を求める:補正した観測角を使って、各辺の方位角を順に計算。
③ 緯距・経距を求める:各辺で ΔX=距離×cos(方位角)、ΔY=距離×sin(方位角)。
④ 閉合差・閉合比:ΣΔX・ΣΔYのずれが閉合差、閉合差÷総距離が閉合比。
⑤ 誤差を配分(コンパス法則など):閉合差を各辺に配分してΔX・ΔYを補正。
⑥ 座標を確定:出発点の座標に、補正後のΔX・ΔYを順に足して各点の座標を出す。
①②は「角の話」、③〜⑥は「距離と座標の話」と分けて覚えると整理しやすいです。この記事では、いちばん迷いやすい③以降を数値で通します。
まず観測した内角の合計が理論値と合うかを点検します。n角形なら内角の和は(n−2)×180°。ずれ(角閉合差)が許容内なら、各角に等分して配分します。補正後の角から各辺の方位角を順に求めます。
この①②の詳しい手順は各記事に譲り、ここでは方位角まで求め終わった状態から先に進みます。下の例では、4辺の方位角がすでに求まっているものとします。
各辺について、緯距 ΔX=距離×cos(方位角)、経距 ΔY=距離×sin(方位角)を計算します。例として、点A→B→C→D→Aの閉合トラバースで考えます。
| 辺 | 方位角 | 距離 L(m) | 緯距 ΔX | 経距 ΔY |
|---|---|---|---|---|
| A→B | 90° | 100.00 | 0.00 | +100.00 |
| B→C | 180° | 50.00 | −50.00 | 0.00 |
| C→D | 270° | 100.06 | 0.00 | −100.06 |
| D→A | 0° | 50.00 | +50.00 | 0.00 |
| 合計 | 300.06 | 0.00 | −0.06 |
例では方位角を90°・180°・270°・0°(東・南・西・北)にして、cos・sinが0か±1になるようにしています。閉じた多角形なら、本来ΔXの合計もΔYの合計も0になるはずです。
合計がぴったり0にならず残ったずれが閉合差です。上の表ではΣΔX=0.00、ΣΔY=−0.06。閉合誤差の大きさは三平方の定理で出します。
閉合誤差 E = √( ΣΔX² + ΣΔY² ) = √( 0² + (−0.06)² ) = 0.06 m
閉合比 = 閉合誤差 ÷ 総距離 = 0.06 ÷ 300.06 ≒ 1/5,000
閉合比は分子を1にした分数で表すのが約束です。この値が許容範囲(等級による)以内なら、誤差を配分して座標を確定します。
閉合差は「観測の小さな誤差の積み重ね」なので、各辺に配り戻して合計を0にします。配分のしかたには2つの法則があります。
・コンパス法則:各辺の距離の長さに比例して配分(距離と角の精度が同程度のとき。測量士補で基本)。
・トランシット法則:各辺の緯距・経距の絶対値に比例して配分(角観測の精度が高いとき)。
ここではコンパス法則で、ΣΔYのずれ−0.06mを各辺の距離(合計300m)に比例して配分します(補正は合計が+0.06になるように加える)。
| 辺 | 距離 L | ΔY補正=0.06×L/300 | 補正後 ΔY |
|---|---|---|---|
| A→B | 100 | +0.02 | +100.02 |
| B→C | 50 | +0.01 | +0.01 |
| C→D | 100 | +0.02 | −100.04 |
| D→A | 50 | +0.01 | +0.01 |
| 合計 | 300 | +0.06 | 0.00 |
補正後はΣΔY=0.00になりました(ΣΔXは元から0なので補正なし)。配分は「長い辺ほど多めに受け持つ」のがコンパス法則の考え方です。
出発点Aの座標を (X, Y)=(100.00, 100.00) とし、補正後のΔX・ΔYを順に足していきます。
| 点 | X座標 | Y座標 |
|---|---|---|
| A | 100.00 | 100.00 |
| B(A+AB) | 100.00 | 200.02 |
| C(B+BC) | 50.00 | 200.03 |
| D(C+CD) | 50.00 | 99.99 |
| A(D+DA) | 100.00 | 100.00 |
最後に出発点Aの座標(100.00, 100.00)にぴったり戻れば、計算が正しく閉じた証拠です。これでトラバース計算は完了です。
① ステップの順番を飛ばさない。角の点検・配分(①)を済ませてから方位角(②)へ。順番が崩れると後段がすべてずれます。
② 閉合比は分子を1にした分数で。0.0002 のような小数のままにせず、1/5,000 の形に直します。
③ 配分の符号。閉合差を打ち消す向き(合計が0になる向き)に補正を加えます。最後にA点へ戻るかで検算できます。
混同しやすい用語
コンパス法則 と トランシット法則
どちらも閉合差の配分方法。コンパス法則は辺の長さに比例、トランシット法則は緯距・経距の絶対値に比例して配分します。測量士補ではコンパス法則が基本です。
閉合差 と 閉合比
閉合差はずれの大きさ(m)、閉合比はそれを総距離で割った相対値(1/5,000など)。精度の良し悪しは閉合比で判断します。
緯距(ΔX) と 経距(ΔY)
緯距は南北方向(X)の差、経距は東西方向(Y)の差。方位角にcosをかけると緯距、sinをかけると経距です。
問題:緯距ΔXは「距離×cos(方位角)」、経距ΔYは「距離×sin(方位角)」で求める。
〇か×か。
答え:〇
緯距(南北・X)はcos、経距(東西・Y)はsinです。
問題:閉合誤差0.06m・総距離300mのとき、閉合比はおよそ1/5,000である。
〇か×か。
答え:〇
0.06÷300=0.0002=1/5,000です。閉合比は分子を1にした分数で表します。
問題:コンパス法則では、閉合差を各辺の「緯距・経距の絶対値」に比例して配分する。
〇か×か。
答え:×
それはトランシット法則です。コンパス法則は「辺の長さ(距離)」に比例して配分します。
今回はトラバース計算の全体の流れを、観測角の点検から座標確定まで通しで整理しました。
流れは①観測角の点検→②方位角→③緯距経距→④閉合差・閉合比→⑤誤差配分→⑥座標確定の6ステップ。式は個別に難しくありませんが、順番を体で覚えることが攻略のカギです。
各ステップの詳しい解説は、それぞれの記事も参考にしてください。
参考法令・規格
※ この記事の確認日:2026年6月
学習のコツ|ソクタの一言
測量士補の試験では、トラバース計算の「1ステップだけ」が問われることが多いです(方位角だけ、緯距経距だけ、閉合比だけ等)。ですが全体の流れを一度通しで理解しておくと、どのステップが問われても迷いません。
測量士をめざす場合は、この通し計算そのものが記述で問われます。順番(①〜⑥)を手が覚えるまで、表を書いて練習するのがおすすめです。