ソクタ
多角測量の計算で出てくる閉合差って何?閉合誤差とどう違うの?と混乱したことがあります。
この記事の要点
閉合差とは、多角測量(トラバース)で閉合トラバースを一周したときに、座標(緯距・経距)が理論上の値に戻らないずれのことです。緯距閉合差・経距閉合差・閉合誤差・閉合比の意味と計算方法を整理します。
※ 水準測量での閉合差(環閉合差)については水準測量の閉合差(環閉合差)とは?で解説しています。
多角測量(トラバース測量)では、出発点から複数の測点を経由して閉合トラバースを形成し、出発点に戻ります。
このとき、観測誤差が積み重なると、計算上の座標が出発点にぴったり戻りません。この「戻り切れなかったずれ」が閉合差です。
閉合差とは、閉合トラバースで一周したときに、計算で求めた座標と出発点の既知座標との差です。
トラバース測量では、各測線の方位角と距離から、各点の座標を順番に計算します。理論上、閉合トラバースを一周すれば出発点の座標に戻るはずです。
しかし実際の観測には角度・距離の誤差が含まれるため、計算座標は出発点とわずかにずれます。
一言でいうと、「ぐるっと一周したのに、出発点の座標にぴったり戻らなかったときのズレ」が閉合差です。
閉合差はX方向(緯距)とY方向(経距)の2つに分けて計算します。
| 名称 | 記号 | 意味 |
|---|---|---|
| 緯距閉合差 | ΔX | 全測線の緯距(X成分)の合計が0にならないずれ |
| 経距閉合差 | ΔY | 全測線の経距(Y成分)の合計が0にならないずれ |
| 閉合誤差 | E | ΔXとΔYを合成した直線距離のずれ |
緯距と経距は、各測線を座標成分に分解したものです。
閉合差の許容範囲は、作業規程の準則(下図)で定められています。
| 用語 | 方向 | 計算式 |
|---|---|---|
| 緯距(X成分) | 南北方向 | 測線長 × cos(方位角) |
| 経距(Y成分) | 東西方向 | 測線長 × sin(方位角) |
閉合トラバースで一周すると、理論上は全測線の緯距の合計も経距の合計も0になるはずです。
実際には観測誤差が含まれるため、合計が0からずれます。このずれが緯距閉合差(ΔX)・経距閉合差(ΔY)です。
緯距閉合差と経距閉合差を合成した直線距離のずれを閉合誤差と呼びます。
閉合誤差 E = √(ΔX² + ΔY²)
閉合比は、全測線長に対する閉合誤差の割合で、トラバース測量の精度を表す指標です。
閉合比 = E ÷ Σ測線長(全測線長の合計)
閉合比は分母を1に統一した分数(例:1/5000)で表します。分母が大きいほど精度が高いことを意味します。
公共測量作業規程の準則では、トラバース測量の等級ごとに許容閉合比が定められています。許容値を超えた場合は再測が必要です。
閉合差と合わせて確認するのが角閉合差です。
閉合トラバースで内角を全て測定すると、内角の合計は理論上(n-2)× 180° になるはずです(nは測点数)。
観測した内角の合計と理論値の差を角閉合差と呼びます。
角閉合差 = 観測した内角の合計 - (n-2)× 180°
角閉合差も等級ごとの許容値と比較し、許容範囲内であれば各測点に均等配分して補正します。
閉合差が許容範囲内であれば、各測線に誤差を配分して補正します。
代表的な補正方法がコンパス法則(ボウディッチ法)です。各測線の補正量を測線長に比例させて配分します。
各測線の緯距補正量 = − ΔX × (その測線長 ÷ 全測線長)
各測線の経距補正量 = − ΔY × (その測線長 ÷ 全測線長)
閉合差の符号を反転して配分するため、補正後の合計はXもYも0になります。
令和4年第5問(正誤:TS基準点測量の精度)では、「既知点と既知点を結合させた点検路線で、閉合差を計算して観測値の良否を判定する」という記述が正しい選択肢として出題されています(正答:選択肢1)。閉合差を求めて精度を確認するのがトラバース測量の基本手順です。
令和3年第5問(正誤:点検路線)では、「許容範囲を超過した場合は点検路線の経路を変更して再計算する」が誤りとして出題されています(正しくは再測が必要、正答:選択肢4)。閉合差が許容値を超えた場合は経路変更ではなく再観測である点を覚えておきましょう。
混同しやすい用語
閉合差 と 閉合誤差
閉合差はX方向(緯距閉合差ΔX)とY方向(経距閉合差ΔY)の2つに分けた値です。閉合誤差はその2つを合成した直線距離(E=√(ΔX²+ΔY²))です。「差」は成分ごと、「誤差」は合成値と覚えると整理しやすくなります。
閉合差(多角測量) と 環閉合差(水準測量)
どちらも「閉じた経路を一周したときのずれ」ですが、測量の種類が異なります。多角測量の閉合差は座標(緯距・経距)のずれ、水準測量の環閉合差は高低差のずれです。測量の種類を先に確認してから用語を使い分けてください。
問題:閉合トラバースで、全測線の緯距の合計が0にならないとき、そのずれを緯距閉合差という。
〇か×か。
答え:〇
経距についても同様に、経距閉合差として扱います。
問題:閉合比は、閉合誤差を全測線長で割った値で、値が大きいほど精度が高い。
〇か×か。
答え:×
閉合比は分数で表し、分母が大きいほど精度が高いです。分子を1に揃えた分母で比較するのが通例です。
問題:コンパス法則では、閉合差を各測線の長さに比例して配分する。
〇か×か。
答え:〇
測線長に比例して配分するのがコンパス法則(ボウディッチ法)の特徴です。
今回は多角測量(トラバース)の閉合差について説明しました。
閉合差とは、閉合トラバースを一周したときに座標(緯距・経距)が理論値に戻らないずれのことです。
緯距閉合差(ΔX)・経距閉合差(ΔY)を求め、合成して閉合誤差Eを計算し、閉合比で精度を確認するのが基本の流れです。
水準測量での閉合差(環閉合差)については下記を参照してください。
多角測量の他のテーマは下記も参考になります。
参考法令・規格
※ この記事の確認日:2026年5月
試験での問われ方|ソクタの一言
測量士補の試験では、この閉合差・閉合比の数値計算(緯距・経距の表を埋める形式)は直接出題されません。
多角測量の精度に関しては「TSを用いた多角測量について述べた記述のうち、明らかに間違っているものはどれか」という正誤判定形式で出題されます(令和5年 No.5、令和4年 No.5 など)。観測回数(1対回/2対回)、倍角差・観測差の点検、点検路線で閉合差を確認するといった内容が問われます。
閉合差・閉合比の計算手順は概念理解として重要ですが、「閉合差を点検して許容範囲内かを確認する」という原則を文章で理解しておくことが試験対策の実態に合っています。