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「閉合差」と「較差」、どっちがどっちかごちゃごちゃになりませんか?観測ルートが閉合か往復かで使う用語が変わる、その仕組みをここで整理します。
この記事の要点
この記事では水準測量の閉合差(環閉合差)を解説します。閉合水準測量で一周したときに生じる観測値のずれ、許容範囲の確認方法、再測の判断基準を整理します。
※ 多角測量(トラバース)での閉合差(緯距閉合差・経距閉合差)については閉合差とは?多角測量での計算方法で解説しています。
水準測量で閉合して一周観測したとき、理論上は誤差ゼロで戻るはずなのに実際はずれが生じます。
ここでは閉合差の意味、較差との違い、試験で問われるポイントを整理します。
閉合差とは、水準測量で出発点に戻る経路で観測したときに、観測値が理論上の値とどれだけずれているかを表す差です。
閉合差は観測精度を確認するための値で、許容範囲を超えた場合は補正ではなく再測が必要になります。
水準測量の全体像については下記も参考になります。
一言でいうと、水準測量で一周ぐるっと測ったとき、「出発点に戻ったらぴったり0になるはず」なのに実際には少しズレます。そのズレが許容範囲内なら合格、超えたら測り直しです。
水準測量では、既知点(標高がわかっている点)を出発して複数の点を観測し、再び出発点または別の既知点に戻る経路をたどります。
理論上、一巡したときの高低差の合計はゼロになるはずです(出発点に戻る場合)。
しかし実際の観測には誤差が含まれるため、理論値とのずれが生じます。
このずれが閉合差です。
閉合差が小さいほど観測精度が高く、閉合差が大きいほど観測に問題がある可能性を示します。
閉合差は、観測が終わったあとで確認する値です。
水準測量の作業方法は、作業規程の準則(下図)で規定されています。
観測の途中では計算しません。
閉合水準測量の大まかな流れは次のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 既知点を出発し、各点の高低差を観測する |
| ② | 出発点(または別の既知点)に戻る |
| ③ | 観測した高低差の合計と理論値を比べる |
| ④ | この差(=閉合差)が許容範囲内か確認する |
| ⑤ | 範囲内なら各点に配分して補正する。範囲外なら再測 |
試験では「閉合差が許容範囲内のとき、各測点に配分する」という手順が問われることがあります。
配分の方法(距離に比例するなど)は、等級や作業規程によって異なります。
測量士補で最も混同しやすいのが「閉合差」と「較差(往復差)」です。
混同しやすい理由は2つあります。
1つ目は、どちらも「差」という字がつき、「観測のずれを数値化する」目的が同じだからです。
2つ目は、「閉合水準測量」と「往復水準測量」という観測方法の違いを先に理解していないと、どちらの言葉をどの場面で使うかが判断できないからです。
「閉合差か較差か」を判断するには、まず「今やっているのは閉合観測か、往復観測か」を確認する習慣をつけると整理しやすくなります。
| 項目 | 閉合差 | 較差(往復差) |
|---|---|---|
| 使う測量 | 閉合水準測量・結合水準測量 | 往復水準測量 |
| 比べるもの | 観測値の合計と理論値(ゼロなど) | 往路の高低差と復路の高低差 |
| 観測経路 | 閉合路線(出発点に戻る) | 行きと帰りで同じ経路を観測 |
| 精度確認の方法 | 許容閉合差と比べる | 許容較差と比べる |
「閉合差は閉合したときのずれ、較差は往復の差」と覚えると混乱しにくくなります。
観測で生じた閉合差が「どこまで許されるか」の上限が許容閉合差です。
公共測量作業規程の準則では、水準測量の等級ごとに許容閉合差が定められています。
| 等級 | 許容閉合差 |
|---|---|
| 1級水準測量 | 2.5mm√S |
| 2級水準測量 | 5mm√S |
| 3級水準測量 | 10mm√S |
| 4級水準測量 | 20mm√S |
Sは観測距離をkmで表した値です。等級が下がるほど数値が大きく、許容範囲が広くなります。
「距離の平方根に比例する」という構造を覚えておくと、等級ごとの精度の違いが判断しやすくなります。
※ 数値は公共測量作業規程の準則に基づきます。改正により変わる場合があるため、最新の準則で確認してください。
A、B、C、Dの4点を結ぶ水準測量を実施し、次の観測高低差を得た。許容閉合差を5 mm√S(Sは観測距離、km単位)として、再測が必要な路線を選べ。
※ この問題は令和4年測量士試験(午前)第13問の数値をそのまま使用しています。測量士補試験では環閉合差の概念(許容閉合差超過→再測)が正誤判定として問われます。
| 路線 | 起点 | 終点 | 観測高低差 | 観測距離 |
|---|---|---|---|---|
| (1) | A | B | +14.393 m | 18 km |
| (2) | B | C | −38.341 m | 32 km |
| (3) | C | A | +23.984 m | 48 km |
| (4) | A | D | +7.185 m | 9 km |
| (5) | D | C | −31.158 m | 12 km |
| (6) | D | B | +7.270 m | 16 km |
手順1:環(かん)を全て列挙する
このネットワークには4つの環(かん)が作れます。初学者ほど全ての環を計算することが大切です。1つでも省略すると、どの路線が誤測の原因かを正確に絞り込めません。
| 環(かん) | 経路 | 使う路線 | 合計距離S |
|---|---|---|---|
| 外周路 | A→B→C→A | (1)(2)(3) | 98 km |
| 右上環 | C→A→D→C | (3)(4)(5) | 69 km |
| 下環 | B→C→D→B | (2)(5)(6) | 60 km |
| 左上環 | A→B→D→A | (1)(4)(6) | 43 km |
手順2:各環の閉合差と許容閉合差を計算する
観測した方向と逆向きに走る路線は、符号を反転させて使います。
外周路(A→B→C→A)
閉合差 = (+14.393) + (−38.341) + (+23.984) = +0.036 m = +36 mm
許容閉合差 = 5√98 ≒ 49.5 mm → 36 mm < 49.5 mm 許容範囲内 ✓
右上環(C→A→D→C)
閉合差 = (+23.984) + (+7.185) + (−31.158) = −0.011 m = −11 mm
許容閉合差 = 5√69 ≒ 41.5 mm → |−11 mm| < 41.5 mm 許容範囲内 ✓
下環(B→C→D→B)
B→C は路線(2)そのまま。C→D は路線(5)(D→C)の逆なので符号反転。D→B は路線(6)そのまま。
閉合差 = (−38.341) + (+31.158) + (+7.270) = +0.087 m = +87 mm
許容閉合差 = 5√60 ≒ 38.7 mm → 87 mm > 38.7 mm 許容範囲超過 ✗
左上環(A→B→D→A)
A→B は路線(1)そのまま。B→D は路線(6)(D→B)の逆なので符号反転。D→A は路線(4)(A→D)の逆なので符号反転。
閉合差 = (+14.393) + (−7.270) + (−7.185) = −0.062 m = −62 mm
許容閉合差 = 5√43 ≒ 32.8 mm → |−62 mm| > 32.8 mm 許容範囲超過 ✗
手順3:NG環に共通する路線を特定する
許容範囲を超えたのは「下環」と「左上環」の2つです。この両方に共通して含まれる路線が、誤測の原因候補です。
| 路線 | 外周路(OK) | 右上環(OK) | 下環(NG) | 左上環(NG) |
|---|---|---|---|---|
| (1) | ● | ● | ||
| (2) | ● | ● | ||
| (3) | ● | ● | ||
| (4) | ● | ● | ||
| (5) | ● | ● | ||
| (6) | ● | ● |
路線(6)だけが、NG環(下環・左上環)の両方に含まれており、OK環には一度も現れません。
→ 再測が必要な路線は(6)(D→B)です。
「全NG環に含まれ、全OK環に含まれない路線」が再測の対象です。1本の路線に誤測があれば、その路線を含む環は全てNGになり、含まない環はOKのままになります。この論理で絞り込みます。
混同しやすい用語
閉合差 と 較差
どちらも「差」という字がつき、観測のずれを数値化するという目的が同じです。これが混同の原因になります。
見分け方は「観測の経路」です。閉合して出発点に戻る経路なら閉合差、同じ区間を往路と復路で測る経路なら較差です。
「閉合差は閉合観測、較差は往復」とセットで覚えると判断しやすくなります。
閉合差 と 誤差
誤差は「真値との差」ですが、真値は実際には確認できません。
閉合差は「理論上ゼロになるべき値と観測値の差」で、誤差を間接的に確認するための値です。誤差そのものではない点に注意してください。
問題:閉合水準測量で、観測した高低差の合計と理論値の差を閉合差という。
〇か×か。
答え:〇
閉合差は閉合観測のずれを確認するための値です。
問題:閉合差が許容閉合差を超えた場合は、各測点に配分して補正すればよい。
〇か×か。
答え:×
閉合差が許容閉合差を超えた場合は再測が必要です。
配分・補正が許されるのは許容閉合差の範囲内のときです。
問題:閉合差と較差は、どちらも往復水準測量で使う値である。
〇か×か。
答え:×
閉合差は閉合水準測量・結合水準測量で使います。
往復水準測量で往路と復路を比べる値は較差(往復差)です。
今回は閉合差について説明しました。
閉合差とは、水準測量で閉合観測したときに観測値が理論値とずれる差のことです。
閉合差が許容閉合差の範囲内なら補正、超えたら再測が必要になります。
較差(往復差)と混同しやすいので、「閉合観測か往復観測か」で使い分けを押さえてください。
水準測量の他のテーマは下記も参考になります。
参考法令・規格
※ この記事の確認日:2026年5月
試験での問われ方|ソクタの一言
閉合差は「補正するか再測するかの判断基準」として問われることが多いです。
「閉合差が許容閉合差以内 → 補正、超えたら → 再測」という判断の流れを先に頭に入れておくと、問題文を見たときに迷いにくくなります。
較差と混同しやすいので、「閉合差は閉合観測、較差は往復観測」でセットで覚えてください。