ソクタ
式は覚えたけど、実際の数字になると手が止まりませんか?同じ観測データを器械高式と昇降式の両方で解いて、答えが一致することを確かめてみましょう。
この記事の要点
水準測量の標高計算を数値つきの例題で解説します。器械高式(IH=既知点標高+後視、標高=IH-前視)と昇降式(高低差の累積)の両方で同じ標高を求め、点検式で検算します。
水準測量の計算は、式そのものより「どの数字をどこに入れるか」でつまずきがちです。
ここでは1つの観測データを最後まで解き、器械高式と昇降式で同じ答えになることを確認します。
この例題では、既知点Aの標高10.000mから出発し、転点TP1を経由して点Bの標高を求めます。
器械高式でも昇降式でも、求まる標高Bは同じ11.300mになります。
計算の前に用語だけ確認しておきます。後視(BS)は出発側(既知点)の標尺の読み、前視(FS)は進行方向(求めたい点)の標尺の読みです。器械高(IH)はレベルの視準線の高さで、計算で求めます。
既知点Aの標高を10.000mとし、レベルを2回設置して点Bまで観測しました。
各設置での後視(BS)と前視(FS)の読みは次のとおりです。
| 測点 | 後視 BS(m) | 前視 FS(m) |
|---|---|---|
| A(標高10.000m) | 1.500 | — |
| TP1(転点) | 1.200 | 0.800 |
| B(求める点) | — | 0.600 |
TP1(転点)は、1回目の前視点であり、かつ2回目の後視点でもある点です。
器械高式は、器械高(IH)を一度求めてから、各点の標高を出す方法です。
使う式は2つだけです。
器械高 IH = その設置の出発点の標高 + 後視(BS)
求める点の標高 = 器械高 IH - 前視(FS)
順番に当てはめます。
① 1回目の器械高:IH₁ = 10.000 + 1.500 = 11.500m
② TP1の標高:11.500 - 0.800 = 10.700m
③ 2回目の器械高:IH₂ = 10.700 + 1.200 = 11.900m
④ Bの標高:11.900 - 0.600 = 11.300m
このように、転点TP1の標高をいったん確定してから、その値を次の器械高の出発点に使うのがポイントです。
昇降式は、区間ごとの高低差(後視-前視)を積み上げて標高を出す方法です。
区間の高低差 = 後視(BS)- 前視(FS)で求め、プラスなら昇、マイナスなら降です。
① 区間A→TP1:1.500 - 0.800 = +0.700m(昇)
② 区間TP1→B:1.200 - 0.600 = +0.600m(昇)
これを既知点の標高に足していきます。
③ TP1の標高:10.000 + 0.700 = 10.700m
④ Bの標高:10.700 + 0.600 = 11.300m
器械高式と同じ11.300mになりました。書き方が違うだけで、求まる標高は同じです。
計算が合っているかは、次の関係で確認できます。
後視の和 - 前視の和 = 終点の標高 - 始点の標高
水準測量の作業方法は、作業規程の準則(下図)で規定されています。
この例題で確かめます。
後視の和:1.500 + 1.200 = 2.700m
前視の和:0.800 + 0.600 = 1.400m
後視の和 - 前視の和:2.700 - 1.400 = 1.300m
終点 - 始点:11.300 - 10.000 = 1.300m
両者が一致したので、計算にミスがないと判断できます。
後視は「足す」、前視は「引く」です。符号を逆にすると標高がずれます。
転点TP1の標高を出さずに、いきなりBを計算しようとすると行き詰まります。必ず転点の標高を確定してから次に進みます。
器械高式で複数の点を計算するときは、どの器械高を使うか(IH₁かIH₂か)を取り違えないよう注意してください。
混同しやすい用語
器械高式 ↔ 昇降式
器械高式は器械高(IH)を経由して各点の標高を出す方法、昇降式は区間の高低差を累積する方法。答えは同じ。くわしくは器械高式と昇降式の違いを参照。
後視(足す) ↔ 前視(引く)
後視は出発点の読みで器械高に足す、前視は求める点の読みで器械高から引く。向きを固定して覚える。
問題:既知点の標高が20.000m、後視が1.300m、前視が0.500mのとき、求める点の標高は20.800mである。
〇か×か。
答え:〇
器械高 IH = 20.000 + 1.300 = 21.300m、標高 = 21.300 - 0.500 = 20.800mです。
問題:水準測量では、求めたい点の標高は「器械高に前視を足して」求める。
〇か×か。
答え:×
前視は引きます。標高 = 器械高 - 前視(FS)です。足すのは後視です。
問題:器械高式と昇降式で同じ観測データを計算すると、求まる標高は同じになる。
〇か×か。
答え:〇
計算表の書き方が違うだけで、求まる標高は一致します。
今回は水準測量の標高計算を数値つきの例題で解きました。
器械高式は「IH=出発点の標高+後視」「標高=IH-前視」の2式で求めます。
昇降式は「高低差=後視-前視」を累積して求め、答えは器械高式と一致します。
最後に「後視の和-前視の和=終点-始点」で検算する習慣をつけましょう。
参考法令・規格
※ この記事の確認日:2026年6月
試験での問われ方|ソクタの一言
本番では計算表の空欄補充として出ます。器械高式なら「IH列があるか」、昇降式なら「昇・降列があるか」で方式を見分け、対応する式を当てはめれば解けます。転点の標高を1つずつ確定していくこと、最後に点検式で検算することの2つを習慣にすると、計算ミスをほぼ防げます。実際の出題例は令和6年 No.10(1級水準測量)などを確認してください。